「はぁ~……」
「何やねん藪から棒に。」
「訊いてもらえますか?」
「ええけど……」
生駒隊談話室、もとい作戦室にて。
隠岐孝二の盛大なため息が室内に響いた。
水上敏志はノートに走らせていたシャーペンを置き、隠岐の方に身体ごと向けた。
「イコさんとセックスしたいんで……」
「そんなこったろうと思うたわっ!!!!!!!!」
水上は勢いよくテーブルに突っ伏した。
「え?水上先輩実はエスパーやったんですか?」
「ちゃうわボケッ!!!!!!!!」
隠岐が目の前に置いていたペットボトルに手を伸ばした。
「絶対無理や思うてたのに、付き合うことになって……最初は舞い上がっとったけど、気づいたら3ヶ月っすよ。」
「おまえ彼女おったことあったやろ?」
「ありましたよ。」
「そんときと同じように誘ったらええやん。一応両想いなんやろ?」
「一応って……傷つくんですけど……」
隠岐はその目に涙を浮かべながら、うつむいた。
「おまえそんなキャラやったっけ?」
水上は基本的に周囲の様子の変化に敏感な人間だが、過去に色恋関係でここまで振り回されている隠岐を見たことがなかった。
「こんなキャラやって、おれも最近知りましたわ。」
水上はぽりぽりとこめかみを掻いた。
「……相手はあのイコさんやろ?ストレートがええんちゃうか?回りくどいことやっても、気づかへんやろ。」
「ストレートって……『えっちしましょ!』ってあの人の手ぇ取ればええってことですか?」
「まぁ、せやな。」
「……自信ないですよ。」
「何でやっ!?両想いなんやろ??相手は女の子でもないんやし、楽勝やろ。」
「断られるかもしれへんやないですか。」
「どっかの乙女みたいなこと言うなや。断られたってフラれるわけやないんやし。それに、あの人の方が経験値低そうやん。チャンスやで。」
「ほんまにそう思います?」
「少なくとも経験値高そうには見えへんけどな……あ、」
「何ですか?」
水上は口元を緩め、隠岐に耳打ちをした。
「色仕掛けすればええんちゃう?」
「は?おれがですか?」