18師弟ssまとめ - 1/6

Love is a game that two can play and both win.

正直2月14日は、荒船哲次にとってあまりいい思い出はない。

「元はキリストの聖人が処刑された日だぜ?狂ってやがるよな。」

「そんな大きな袋を抱えてたら説得力ないよ?」

「断っても勝手に下駄箱とかに入ってんだよ。どうやったらあんな狭い空間にあれだけ詰め込めるのかわかんねぇけどな。」

「荒船をすきな子たちがかわいそ~!!」

「てめぇをすきな奴の方が可哀想だと、俺は思うけどな……。」

本日の授業は終わり、この後荒船と犬飼澄晴は防衛任務である。
そのため、制服のまま大きな袋を抱えて本部に向かう羽目になった。
犬飼も荒船と同等もしくはそれ以上の量のチョコレートを紙袋に入れてぶら下げている。

「鋼が支部所属で助かったな……」

「ああ……確かにこの量は誤解しちゃうね。」

荒船と村上鋼の関係は、一部の近しい人間だけが知る秘密である。
すると、犬飼が急に歩みを止めた。

「そんな荒船に朗報です!!」

「あ?」

「前方に人影アリ!おれは先に行くね。」

「おい犬飼っ!!ちょっと待っ……」

そそくさと速足で去っていく犬飼とすれ違う、見知った人影。
気づいた荒船は、珍しく焦りを見せた。

「こ、鋼……」

「すごいな荒船。それ、全部貰ったのか?」

荒船は、大きな紙袋に溢れんばかりのチョコレートを抱えていた。
色とりどり、大きさもさまざまだ。
中には本命であろうブランドチョコまで入っているのが見える。

「荒船はかっこいいから、やっぱりモテるんだな。」

「全部義理だろ。」

「それはないだろ。どう見ても本命っぽいのが混じってるぞ。」

村上は内心いい気持ちはしていないはずだ。
女性がすきな男性にこぞってチョコを贈る日。
海外での風習はともかく、日本ではそういうイベントだ。

「鋼、気を悪くすんなよ?」

「大丈夫、怒ってない。」

荒船はほっと胸を撫で下ろし、道の端まで移動して紙袋をアスファルトの上に置いた。

「鋼、おまえに渡すもんがある。本当は帰りに声かけて泊まりにでも行こうかと思ってたんだ。」

「俺も渡したいものがあるからここで待っていたんだ。」

荒船が鞄から出したものは、チョコレート……ではなかった。

「チョコレート会社の陰謀には乗らねぇ。日本では女子の祭典になっちまってるしな……この時期のチョコレート屋なんて行けねぇし、でもまぁ、おまえには世話になってるからな。」

「何だこれ?映画のチケット?」

包装紙に包まれていた封筒を開けると、二枚のチケットが入っていた。

「まぁ俺が行きてぇだけなんだけどよ。デートだデート。次の週末に映画でも行こうぜ?たまにはおまえが観たい映画に付き合うからよ。」

「あ、ありがとう!!」

村上は目を輝かせた。
本当はもっと高価なプレゼントでも……と考えていたが、謙虚な村上のことだからお返しに気を使われるのが目に見えていた。
それに、一緒にすごせれば何でもいいというのは、荒船も同じだった。

「……それにしても荒船らしいな。」

「悪いかよ?」

「いや?嬉しい。ありがとう。……あ、俺からのプレゼントは……やっぱ後で、うちに来たときに渡すよ。」

「何だよ?今持ってんだろ?出せよ。」

「え?でも……荒船そんなにチョコ貰ってるから……」

「じゃあこれ全部おまえにやるからそっちよこせ。」

「え?それはちょっと……」

「いいから出せよ。」

村上がしぶしぶ鞄から取り出したのは、包装紙に包まれた正方形の箱だった。
一目で手作りのものだとわかる。

「ガラじゃないとは思ったんだが、今が……男女は関係ないとか、友チョコっていうのもあるって言ってきて……作り方まで教えてくれるって言うから……。」

「鋼が作ったのか?」

「あ、ああ。大したものじゃないんだ本当に。今はいろいろなレシピがネットに公開されているからな。荒船はビターがすきそうだから、甘さも控えた……でも、」

「何だよ?」

「普段お菓子なんて作らないから、その抱えられた紙袋を見ていたら段々自信がなくなってきたんだ。」

村上がしょげた顔を見せた。
荒船には垂れたうさ耳っぽい幻覚まで見えてしまう。

「悪かったよ。これは元々、作戦室に置いて皆で食べようと思ってたんだ。俺一人じゃどうにもなんねぇし、……途中でおまえと会うことは想定していなかった。そもそもこういうイベント関係はお互い疎い方だろう?」

「荒船が謝る必要はないだろ?俺が勝手に待っていたんだ。今日は夕方から防衛任務だって知っていたし、本部へ行く際にはここを通ることも知っていた。今日は俺の方が授業が終わるのも早かったから、……必ず会えると思っていた。実際会えたわけだけど……」

「鋼、あんま握りしめてると溶けるんじゃねぇか?」

「あっ!!」

村上が箱を握りしめていた手を緩めた瞬間、荒船はその箱を横からひったくった。

「荒船っ!!卑怯だぞっ!!」

「こりゃ俺にくれるつもりで作ったんだろ?俺のもんじゃねぇか……。あ、その紙袋からすきなの持っていっていいぜ?来馬さんたちと食べろよ。」

「荒船っ!!今から別のプレゼントを準備するからっ!!」

荒船は背中と肩で起用に村上を制しながら、包装紙を雑に破って箱を開けた。

「すごいな。これ本当におまえが作ったのか?」

「だっ、だからそう言ってるだろ!!」

箱の中には、トリュフチョコレートがいくつも敷き詰められていた。
見た目は店に売っているものと大差はない。
荒船はそのうちの一つを口に放り込む。

「あっ、ばかっ!!」

「鋼、美味いぞ。」

「そ、そうか?よかった……」

「おまえも食うか?」

「え?いや、昨日散々食べたからもう……」

「遠慮すんなよ。」

「ちょっ、あらふっ……んんっ、」

荒船が村上を引き寄せたかと思いきや、その唇を塞ぎ、口移しで溶けかけたチョコレートを押し込んだ。

「むぐっ、……ばっ、ばかっ!!外だし、この道はボーダーの人間もっ、……」

「鋼、正直ヴァレンタインなんて浮かれたイベント、めんどくさいしすきじゃなかったんだが、言うほど悪くねぇかもな。」

「あ、荒船……?」

珍しく照れた顔を見せた荒船に対して、怒る気が失せてしまった村上だった。

「そんなものでよければいつでも……」

「また俺のために作れよ。」

「ううっ、……卑怯だ……」

「何がだよ?」

「そんなふうにお願いされたら、断れるわけないだろっ!!」